赤羽橋駅4分 麻布十番駅6分 曽根田歯科診療室 麻布十番・赤羽橋
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歯の治療で被せ物(クラウンやオンレー)が必要になったとき、「どんな素材を選ぶべきか?」はとても大切です。特に近年は、金属を使わない メタルフリー修復 が注目され、白くて美しい仕上がりが得られるセラミック素材が主流になりつつあります。
その中でもよく比較されるのが、E-max(リチウムジシリケート系セラミック) と ジルコニア(酸化ジルコニウム) です。見た目はどちらも「白い歯」ですが、それぞれの強みや弱み、適応範囲には明確な違いがあります。今回は臨床的な特徴と、どのような場合にどちらを選ぶのが良いのかを詳しくご紹介します。
E-maxは、ガラスセラミックの一種で、透明感があり自然な色調を再現できる素材です。特に前歯や笑ったときに見える部分では、**「天然歯と区別がつかない美しさ」**を実現できます。
さらに重要なのが、残存エナメル質があると接着で強度が増すという特性です。E-maxはHF酸処理とシラン処理を行うことで、エナメル質と化学的・機械的に強固に接着できます。このため、歯と修復物が「一体化」し、破折抵抗が高まるのです。
この特性を活かし、最近は大臼歯でもフルクラウンではなく Onlay(部分被覆) で修復するケースが増えています。歯を大きく削らずに済み、天然歯を温存できる点も大きなメリットです。
セラミックは「割れやすいのでは?」と不安に思われる方もいます。しかし、長期データが出ていることで信頼性が高まっています。
アメリカの Malament ら の研究では、E-maxを用いたクラウンの20年近い追跡を行い、約95〜96%の生存率を報告しました。主な失敗原因は破折や二次むし歯でしたが、残存エナメル質を確保し、適切な接着操作を行えば、非常に高い長期安定性が得られると結論づけています。
つまり、E-maxは「見た目が美しいだけでなく、20年単位での長期予後も期待できる」素材なのです。
ジルコニアは非常に高い強度を誇るセラミックで、「人工ダイヤモンド」と呼ばれることもあります。特に大臼歯やブリッジのように強い咬合力がかかる場面で力を発揮します。
ただし、ジルコニアにも「世代」による違いがあります。
3Y-TZP(第1〜2世代):強度は抜群(1000MPa以上)が、不透明で審美性は低め。
4Y-TZP(第4世代):強度と透過性のバランスが取れており、臼歯クラウンの第一選択。
5Y-PSZ(第3世代):透過性は高く前歯に適するが、強度がやや低下するため大臼歯では慎重に。
このように、ジルコニアは「どの世代を使うか」で適応が変わるのが特徴です。
前歯部
→ 審美性を最重視。E-maxが第一候補。ただし、強度を求める場合は透過性ジルコニアも検討。
小臼歯部
→ どちらも選択可能。審美性を重視すればE-max、咬合力が強ければジルコニア。
大臼歯部
→ 強度が最優先。基本はジルコニア。ただし、残存エナメル質が十分でOnlay設計できる場合はE-maxも有力。
Q1:どちらが長持ちしますか?
→ E-maxもジルコニアも10年以上持つ報告があります。さらに、E-maxは20年近いフォローで95%以上の生存率が示されています。ジルコニアも強度が高く、10〜15年追跡で同等以上の安定性が確認されています。
Q2:色は自然に見えますか?
→ E-maxの方が透明感に優れ、天然歯に近い見た目になります。ジルコニアも近年は自然になっていますが、やや均一な白さになります。
Q3:費用は変わりますか?
→ 一般的にE-maxとジルコニアはどちらも保険外治療で、医院によって価格差はあります。審美性と強度のバランスで選ぶと良いでしょう。
E-max は、残存エナメル質と接着することで破折抵抗が増し、自然な美しさを実現できる。20年近い長期予後も報告されており、審美性と耐久性を兼ね備えた素材。
ジルコニア は、世代によって特徴が異なるが、基本的に強度に優れるため、大臼歯やブリッジに安心。長期予後データも良好で、今後さらに20年レベルの報告が増える見込み。
👉 シンプルに言えば、
「エナメルを活かせるならE-max、活かせないならジルコニア」
というのが現時点での最も合理的な選び方です。
何かご不明な点があれば、
曽根田歯科診療室 麻布十番・赤羽橋
までお気軽にお問い合わせください。
監修
麻布十番・赤羽橋 曽根田歯科診療室
院長 曽根田 皓士